アマンダはしばらく辺りを探し回った。
嫌な予感がしてならなかった。そうこうしている間に、時間が無駄に過ぎて行き、アマンダは、車に戻り、急いで湖畔の雑貨屋に向かった。
「とにかく、落ち着いて、奥さん」雑貨屋をしている老夫婦の旦那さんが、凄い形相で駆け込んで来たアマンダに、少し警戒しながら言った。
落ち着け?自分の子供がいなくなったのに、どこの親が落ち着いていられるの!
「電話をかしてください!」
老婦人は、黙ってお店の奥を指差した。
「ありがとう」
アマンダは、素早い動作で、奥にある公衆電話に駆け寄った。
「警察です。何がありました?」
実はアマンダは、この数分の警察とのやり取りを余り記憶していない。自分が焦りながら、何度何度も説明しているのに、相手は、まるでロボットのようだった。
やっと一台のパトカーが、アマンダのいる雑貨屋に着いた。
パトカーの中から出てきたのは、アマンダと対して年が変わらなそうな、女性警官だった。
たった一人なの?
「こんにちは、奥さん。トンプソンと言います。まずは、もう一度状況を最初からご説明して下さい。」
何度も説明したわ!アマンダは、手帳を開いて待っているその警官を、睨み付けた。
トンプソンは、そんな人は沢山見てきたと言わんばかりに、肩をすくめた。
「奥さん、お願いします。どこで、お子さんを見失いましたか?」
「どこで?」
アマンダは、自分の記憶を改めて追った。
しかし、頭の中に浮かぶのは、静かで大きな湖だけだった。
「湖の畔よ。あの辺りはどこも同じだわ。」
「何か標識が見えませんでしたか?」
標識!駄目だ!何も浮かばない!
ふとアマンダは、はっと気がついたようにトンプソンに言った。
「夫に、夫に、電話しないと、、」
トンプソンは、優しくアマンダの腕に手をかけた。
「ええ、どうぞ」
「どういう事だ?見失ったって?!」
夫は、まだ会社にいた。今は、電話口の向こうから、アマンダを怒鳴り散らしていた。
レニーは、普段はしごく冷静な人だ。アマンダは彼と口喧嘩する度に、喧嘩の理由より、彼がある意味、冷徹な程冷静なたちにイライラがつのるのだった。
その彼が我を失っている!
「レニー、分からないのよ!ほんの数分の事だったから、、」
とにかく夫は、すぐこちらに向かうと言い、電話を切った。
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