夫のレニーは、仕事で後から追うとの事で、アマンダは、自分の車の後部座席に、5才になったばかりの息子カイルを乗せて湖畔に平行した道路を走っていた。
片方には湖、もう片方には大きな森林地帯が続いていた。
晴れた日は、まぶしい位の日光が湖の表面に突き刺さり、サングラスが必要だった。
だが今日は、あいにく天気は曇っていて、風も少ないようだった。
元々静かな場所で、そこがアマンダもレニーも気に入っていた。
「ママ!」と、突然カイルが叫んだ。
「何?」アマンダは、一瞬カイルの方を向いた。
「ママ、あそこに男の子がいる!」
「え?」アマンダは、急いでブレーキを踏んで、路肩に車を寄せた。確かにカイルより少し上位の年頃の男の子が、アマンダ達の前を歩いていた。
こんな湖畔の、うら寂しい所に、小さな子供が何で一人でいるのだろうか?と、アマンダは、周りを見渡した。
近くには、その子供と自分達以外誰もいないようだった。
「ねぇあなた、どうしたの?パパやママは?」
少年は、何も答えなかった。
アマンダは、ふと、彼の顔が濡れているのを見て、思わず彼の髪の毛に触れた。
「まぁ!びっしょりじゃない?!待ってて」
アマンダは、車内にある自分の荷物から、タオルを取り出して、それを少年の頭から覆って乾かしてやった。
「お家はどこにあるの?乗せて行ってあげるわ」
少年が指差した先は、湖しかなかった。アマンダは、きっと自分達と同じように、湖畔のどこかのコテージだろうと思った。
「ママー」とカイルが首を振っていた。
「あぁ、そうだった。知らない人の車には乗ってはいけません。だった」
アマンダは、携帯を取り出したが、電波が届いていなかった。
「仕方ないわ。歩きましょう。」
しばらく歩けば、地元の雑貨屋があるはずだった。そこで、警察を呼ぼう。
ふと気がつくと、子供達の声がしなかった。振り向くと、いるはずのカイルと少年がいなかった!
「カイル!」アマンダは慌てて叫んだ。
だが、返ってくるのは圧倒的な森の静けさと、湖からのさざなみの音だけだった。
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